甲状腺疾患
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、代謝が高まる(亢進する)ことで症状が現れます。甲状腺が腫れてホルモン生産が増加するバセドウ病が有名ですが、甲状腺が破壊されて一時的にホルモンが大量に分泌される亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎などもあります。
典型的な症状としては、暑がりになり汗をかきやすくなったり、手が震えたり、体重減少、動悸などが現れます。下痢や気持ちが落ち着かない、怒りっぽくなる、疲れやすいなどの症状が出ることもあります。
また、産後の女性に甲状腺ホルモンの異常がみられることも少なくありません。産後の体調がすぐれない時などにもご相談ください。
甲状腺機能低下症(橋本病など)
橋本病は慢性甲状腺炎とも呼ばれる甲状腺機能低下症の代表的な病気です。免疫の異常により炎症が生じ、甲状腺が少しずつ破壊されます。甲状腺の炎症により首が太くなったように感じます。全身の代謝が低下するため、耐寒性の低下(寒がり)、体重増加、体温低下、だるさ、便秘、高脂血症などが出現します。また、気分が落ち込んだり、不安感が増したりすることもあります。うつ病や更年期障害、脂質異常症として治療されていることもあるので、疑わしい症状があれば、甲状腺ホルモンの検査をおすすめします。
甲状腺機能の低下は不妊の原因にもなります。妊娠希望の女性でなかなか妊娠に至らない方、甲状腺ホルモン薬を内服していても妊娠しにくい女性の方は、普通の生活には十分であっても、妊娠するには不十分なホルモン量である可能性があります。ご相談ください。
甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気づいたり、検診などで指摘されたりする方が増えています。多くは良性腫瘍であり、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、のう胞などが含まれます。悪性腫瘍(甲状腺がん)は、乳頭がんが全体の90%以上を占めているといわれています。甲状腺に腫瘍が見つかった場合、良性、悪性を判断するために速やかに専門病院をご紹介いたします。
下垂体疾患
脳下垂体は脳の中心から垂れ下がっている器官であり、内分泌腺のホルモン分泌や尿量を調節する重要な役割を果たしています。脳下垂体のホルモン分泌が増加する病気には先端巨人症、クッシング病、末端肥大症などがあります。逆にホルモン分泌が低下する病気には下垂体機能低下症や中枢性尿崩症があります。下垂体腫瘍は症状としては視力・視野障害があり、良性が多く、時間をかけてゆっくり増大する特徴があります。
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺の病気の多くは、副甲状腺機能亢進症です。副甲状腺ホルモンの過剰な分泌によって、血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿路結石、骨粗鬆症や高カルシウム血症によるさまざまな症状(食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、倦怠感、筋力低下、精神症状、のどの渇き、多飲多尿など)を引き起こします。血液中のカルシウム・副甲状腺ホルモン(PTH)量が高値になることで診断ができます。
特に高齢の方の場合、認知症と間違えられることもあるホルモン異常です。
副腎腫瘍
副腎は腎臓の上にある小さな器官であり、ホルモンを作る働きをしています。副腎に腫瘍ができ、ホルモンが過剰に生産されると、太ってきたり、高血圧になったり、糖尿病になるなどさまざまな症状が起きてきます。副腎ホルモンは人にとって必要不可欠な物質であり、副腎の働きが悪くなる病気は生命に関わることもあります。血液検査のほか、ホルモン負荷試験や各種画像診断等で正確に診断することが重要です。
肥満症
肥満に伴って糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを合併し、減量が必要とされる病態が肥満症です。単純性肥満と内分泌疾患などに伴う二次性肥満があり、単純性肥満でも内臓脂肪の蓄積による内臓肥満は、メタボリックシンドロームの基盤となり、他の生活習慣病や動脈硬化性疾患の危険性が高まるといわれています。重度の肥満症では生活指導とあわせて、薬物療法や超低カロリー食事療法、手術療法などが行われることがあります。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の量と質の低下により骨折しやすくなる病気です。生活習慣病の1つと考えられており、高齢化と共に増加し、予防や早期診断が注目されています。骨粗鬆症には閉経後の女性に多い「閉経後骨粗鬆症」のほかに、甲状腺や副甲状腺など内分泌疾患と関係して起こってくるものもあります。気になることがある方は、一度骨密度を測定することをお勧めします。