肥満症治療薬として保険診療で使用できる「ウゴービ皮下注」
- 2024年4月7日
- 糖尿病
うえだ内科・糖尿病内科クリニック江古田の院長上田です。
患者様からのお問い合わせの多い、「ウゴービ皮下注」について、書いてみます。
2023年11月に薬価収載されたノボ ノルディスクファーマの「ウゴービ皮下注」が、2024年2月22日発売となりました。ウゴービはもともと2型糖尿病治療薬として使用しているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名オゼンピック皮下注、リベルサス錠)を、肥満症患者にも使用できるようにした薬剤です。同剤は、空腹感を軽減し、満腹感を高めることにより、食事の量を減らしてカロリー摂取量を抑え、体重減少を促します。ウゴービの投与量は、オゼンピックの投与最大量1.0㎎よりも多く、2.4㎎まで投与できるため、強力な効果が期待できます。消化器系の副作用が見られるため、慎重に投与されることが必要です。
どのくらい体重が減るのか?
投与開始から68週までの体重の変化率では、プラセボ群-2.4%に対し、ウゴービ群では-14.9%で、有意に体重減少効果が見られています(国際共同第Ⅲ相臨床試験)。投与前体重100㎏の方で、68週後に85.1㎏程度に減量したことになります。
どんな患者さんに使えるのか?
適応症
肥満症 ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。 ・BMIが27㎏/㎡以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・BMIが35㎏/㎡以上 |
肥満症の診断に必要な健康障害
1.耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2.脂質異常症
3.高血圧
4.高尿酸血症・痛風
5.冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
6.脳梗塞・一過性脳虚血発作
7.非アルコール性脂肪性肝疾患
8.月経異常・女性不妊
9.閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満定款既症候群
10.運動器疾患(変形性関節症)
11.肥満関連腎臓病
したがって、健康障害を伴わない肥満の方に使えるダイエット薬ではありません。
どの医療機関でも処方可能な薬でもありません
厚生労働省は、GLP-1受容体作動薬の乱用を防ぐため、最適使用推進ガイドラインを満たす施設、医師のみ処方可能としています。
施設要件
・内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保健医療機関
・高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病ならびに肥満症の病態、経過と予後、診断、治療を熟知し、本剤について十分な知識を有している医師の指導のもとで本剤の処方が可能な医療機関であること。
・施設内に、日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会の専門医を有する常勤医師がおり、本剤による治療に携われる体制が整っていること。
・上記3学会のいずれかにより教育研修施設として認定された施設であること。
・常勤の管理栄養士による適切な栄養指導ができる施設であること。
以上のような厳しい施設要件があります。したがって、現状では大学病院レベルの大規模な医療機関に限られます。
当院は教育研修施設ではありませんので、発売直後から本剤による治療を開始することは困難である可能性が高いです。
当院では、2型糖尿病をお持ちの肥満患者さんには食事・運動療法を基本とし、ウゴービ皮下注と同じセマグルチドであるオゼンピック皮下注、リベルサス錠なども用いながら、治療を進めていく予定です。(より体重減少効果の高いとされるマンジャロ皮下注は薬剤の安定供給がされないため、新規導入が困難な状態です)。2週間ごとに通院可能で、定期的な管理栄養士による栄養指導を受けられる方で、ウゴービ皮下注を処方できる病院に通院希望の方には、大学病院等をご紹介しますのでお申し出ください。